縁(へり)のない畳。スタイリッシュに見えるからでしょうか?
でも、その琉球畳、ほとんどが「琉球風」畳なんです。
そう。琉球畳ではなく琉球風。だからニセモノ!!
ホンモノではありません。
というわけで畳のおさらい。
「七島藺(しちとうい)」という作物があります。
全国でも大分県でのみ栽培されている、大変希少な物です。
先だって世界農業遺産に認定された大分県国東半島で、それを構成する作物として登録されているんです。
さて、七島藺の「藺」は藺草(いぐさ)のい。
畳表(たたみおもて)に使われるあのイグサです。
畳なんて珍しくないでしょ?と言われそうですね。ところが、この七島い…一般に畳表に使われているい草とは種類が違うのです。い草の産地でも知られる地域の名をとった備後表、肥後表など、名の知られた畳表がありますね?それらは通常のい草で織られたもの。産地は地元であったりヨソであったり輸入品であったりとまちまちです。
ここでいつもの非・常識。
実は、唯一、この七島いで織られた畳表のみが「琉球表(りゅうきゅうおもて)」と呼ばれるんです。
…そうなんです。琉球表を使った畳だけが「琉球畳」なんです。だから、備後表で作ったのはただの「縁(へり)なし畳」。
普通のい草との違いで分かりやすいのはこの姿。
断面が三角です。
植物学的にもい草はイグサ科。
七島いはカヤツリグサ科に属する植物でい草とは異なる品種なのです。
違いはそれだけでなく、丈夫で長持ちすること。ですから、い草の畳と使い分けられ、昔は客間でなく居間、お店の店先などに使われていたようです。
例えば、関東某所にある築300年の、とある古民家をでは、「お勝手」と呼ばれる通用口は七島いの畳ですが…
ところが、身分の高いお客様をお迎えする式台付きの玄関から入った座敷には、い草の畳が敷かれています。
さて、先ほども説明した通り、七島いは現在、大分県だけ。そして大分県でも、ごく数件の農家さんで栽培されているだけ。製品として出荷される畳表は2千枚が限度だそうです。
その希少価値から値段も高く、行き先はほとんどが都会のお金持ちの所へ出荷されているようですね。立場逆転です。琉球表のほうが高級な畳になってしまったそうです。
また、強いことから昔は柔道場の畳にも使われていました。
現在の柔道場にはビニールが貼られたものが使われていますね。審判規定にも畳またはそれに類するもの。として書かれているようです。
数年前、大分県の「くにさき七島藺振興会」の方々が地域資源の見直しと販路開拓のために、七島いを使った柔道畳を(現代風に?)開発。県内の大学の柔道場1試合場分をビニール製から七島い製のものに変え、その耐久テストが行われました。このような伝統素材の見直しが多く行われ、見直されることを祈っています。
細田さん写真お借りしました。
さて、この七島い。現在、大分では稲と同じように水耕で栽培されています。
が、ご覧の通り手植え。稲のように機械で植えることが出来ないんです。当然刈り取りも手作業。皆さんの想像をはるかに超える「手間」をかけて出来上がります。
我が国の伝統素材、おおいたの伝統素材としてだけでなく、世界の伝統として皆で守っていかねばならないものなのです。