工事の手間が省ける。工期が短縮できる。費用が浮く。工事を行う会社さんにとっては嬉しい製品ですよね。でも、本当にソレ「いらない」のでしょうか?
例えば、現代では全ての建物に「土」や「漆喰」を塗ることは出来ません。
建物を建てるときには様々な制約がありますね?
費用、工期、耐震などのほかに、「軒をあまり張り出せない」など、構造上、どうしても壁に高い防水性を求めなければならないこともあります。そこに土や漆喰なんて塗ったら何年も経たずに下地が傷んでしまいます。
だから出来たのが「土がいらない塗り壁」「漆喰がいらない塗り壁」
…そして「左官職人がいらない壁紙や板」。
新旧2種類の「壁」があります。
左は現在、多くの住宅で用いられているサイディング。そして右は…我が国伝統の土壁。
違いが分かりますか?
現代の工法では
昔に比べて比較的細めの柱を使っています。また、筋交いなどを入れて補強しています。内部に水が入った時にそれが雨漏りの原因とならないように防水紙が貼られています。 ただ、そのままだと熱を通すので、壁の中に断熱材を入れる。外壁板と板の間はシーリング材を充填して防水する。
…一見、機能的ですが、簡易的といった印象も否めません。
伝統構法の土壁。
構造を支えるしっかりした柱の間には貫が入っています。竹を縦横に網目のように入れているのは竹小舞という、土壁を塗りつけるための知恵です。土を何層かに塗り重ね、最後に漆喰で保護。古民家などで土壁のままのものもありますが、漆喰を塗ることで、雨に壁が流されにくくなるので、より壁が長持ちします。断熱は分厚い土と空気によりしっかりと行われます。現代ものに比べると防水の能力は低いですが、その代わりに壁に含んだ水分が環境をコントロールしてくれます。
住まいづくりにとってどちらが望ましいか?
機能だけなら現代のもののほうが良いのかもしれません。
お財布に優しいのも現代のものでしょう。
では、住まう人にとっては??
答えるまでもないですね。
昔の壁が良かったということは、多くの方が認める既知の事実です。
土壁を基本とした伝統的な工法は1000年を超えて我が国で培われてきた「技術」なのです。まさに、歴史が証明している。といっても言い過ぎではないでしょう。
そして、半世紀、もしくは100年過ぎた時、住まいから発生する「建築廃材」は廃材とはなりません。ほとんどすべてのモノが再生可能、または自然に還すことの出来る資財なのです。
「いらない」代わりにあきらめるコト、それが現代の住まいづくりの残念な姿なのかもしれません。
でも、本当にイラナイならとっくに誰もが使わなくなっているはずなんですよ。
漆喰、イラナイんでしょうか…?