今日9月6日は読んでそのまま「クロの日」。
本来は墨染の黒い着物の振興のために定められた日だそうなのですが…
私たちにとって「黒」といえば黒漆喰。
と、いうわけで黒漆喰について人気の記事をおさらいです。
奈良は墨の産地としても有名です。
奈良墨とも呼ばれる、油煙墨は油煙を燻らせて作った煤と膠を練り合わせ、成型、乾燥、磨きなどの工程を経て作られるもの。現代では煤を作ることが難しくなっており、また、伝統的な奈良墨を作っている方も少なくなっていると聞いています。
そんな中、伝統技法を守っておられることで全国的にも有名な古梅園さんに行って来ました。
伝統建築がそのまま残されている店舗の佇まいも素敵です。
壁に塗られているのは黒漆喰。左官材料の中でも製造が大変難しい製品です。
漆喰の主成分は消石灰。真っ白なものが主成分なのです。
そこに黒いものを混ぜると?
ミクロなイメージとしてはこんなカンジ。
石灰の粉と黒い粉が混じりあうことで、結果的に「黒く」見えているわけです。
ところが、劣化して黒い顔料が抜け落ちると?
主原料である漆喰の白が勝つわけです。
塗料が色あせてしまうのも、メーカー製の漆喰が色あせやすいのも、同じ理由からです。色の粉が落ちると、主原料の色が勝ってしまうわけです。
また、黒漆喰に限らず、漆喰に色をつける際にはその着色顔料を可能な限り分散混合させなければならないのですが、上記の店舗の黒漆喰、お店の方に聞くと100年近く前に塗られたものとのこと。近くで見ると色あせては見えますが、逆に風格さえ感じられるほど素敵です。
しかし、高速ミキサーや粉体混合機などが無い時代、どうやって混ぜていたのでしょうか?
答えは意外なトコロから…
以前お世話になった塗料メーカーの技術の方から「白に黒じゃなくて、黒に白混ぜれば?」と。
しかも、同じ量でも黒の粒子が小さいほど分散も良く、脱落後の見栄えも悪くない。
こんなカンジ?
そうなのです。
時間をかけてゆっくりと燻らせて作られた煤は粒子がとても小さいものです。
そして、黒漆喰を造る際には分散が良くなるようにお酒(アルコール)などにあらかじめ黒を溶かし
、それに石灰を加える左官さんも多いようです。その漆喰も時間を掛けてゆっくり寝かせながら、練り直しながら作られていくとのこと。
でも現在、その原料の入手が難しくなっています。
左官用墨は「松煙(しょうえん)」と呼ばれる松を燃やして作られたものが一般的。ただ、昔ほど分散が良いものがなかなか手に入らないようなのです。さらに「黒漆喰」自体を作ることの出来る左官さんも少なくなってきたようですね。
だからといって、コレはご法度。
黒漆喰の補修に黒い塗料。
漆喰と塗料は相性が悪いことは以前述べましたね。
バリバリ剥げてしまっている塗料よりも、かえって色あせた漆喰の方が見栄えがいいですよね?