新たなしっくいの時代がきた …のか?
かつて木造建築ばかりであったニッポン。火事で燃え広がらないように、地域、構造や用途などに合わせて、建築に使う素材に配慮が行われています。そのひとつが不燃材料。
不燃材料についてはこちら参照;燃えない。それが「しっくい」
時代が変わればいろいろ変わる。
燃える→燃えない材料を使う→仕様が変わる …燃える。
歴史とは終わらないワルツのようなものです という某メインタイトルにもなった名言が思い起こされます。
しっくいが燃えるようになったのでしょうか?
新たなしっくいが必要な時代になったのでしょうか?
いえ、違います。
しかしながら、建築様式が多様化する中、そもそも不燃材料とされているしっくいなのに、不燃の基準を満たさないという不思議な可能性が出てきたのです。
しっくいが不燃材料の基準を満たさなくなる理由
その理由のひとつは
添加材料
しっくいという定義の曖昧さから技術革新の思想のもとに加えられていく添加材これは何となく想像できますよね?
燃えないものに燃えるものを加えれば燃えるようになってしまうわけですから。
もうひとつは
素材の組み合わせ
しっくいのほか、板や下塗り材料など、塗る素材それぞれは基準を満たしていても、それらを組み合わせると安全基準を超えてしまうという、建築の仕様の変化によって出てきたものです。
なので、燃えないはずのしっくいですが
国民の生命・健康・財産の保護のため、建築物の敷地・設備・構造・用途についてその最低基準を満たすためには、
- しっくいが塗られる下地
- しっくいを仕上げるために使われる下塗材
- しっくい
具体的にいえば
せっこうボードにせっこうプラスターとシーラーを塗ってしっくいを塗る。
不燃かどうかの評価は、全部が塗られたボードのサンプルピースを丸ごと燃やすことで行われます。
燃える→燃えない材料を使う→仕様が変遷する→燃える
ともかく
「しっくいを塗れば不燃」と言い切れない時代となっているでしょう。
でも、新たなしっくいへのアップデートは不要!
では、しっくい自体を新たな製品に変えてしまう必要があるのでしょうか?
いえ、そんなことはありませんよね。
かつて大陸からニッポンにしっくいが伝えられて1000年以上。これまで使ってきたしっくいが使えなくなったわけではありません。
1000年前とちがう素材に、ちがう方法で塗る必要はありますがしっくいの本質自体は変わっていません。
千年間、アップデート無し
古代~近代~現代、どの時代においても普遍の材料がしっくいです。
しっくいは 石灰 と すさ と のり この3つでつくられる大原則はそのままです。
材料だけでなく職人の仕事も同じ。
ちゃんとした建付けをして、下地を整え、しっくいで仕上げる。
途中の過程が少し違うだけです。
ちゃちゃっと塗ってオシマイにしたい?
ごくまれに「誰でも塗れるような簡単な素材にしないとしっくいが無くなる」とのアドバイス。
また「誰でも塗れるようにマニュアルを整えたり教育を行えば、もっと需要が増える」とも。
千年間、塗りにくいのです
だったら、別にしっくいじゃなくていいでしょう?
かつて誰もが憧れた日夜なく技術を磨き、研鑽を積む左官職人に立派な仕事を頼む必要もなくなってしまいますよね。
そして、
昔も今も、そして未来も、しっくいが塗れる職人はカッコいいのです
Photo by 京町家工房