「漆喰」といわれると、白い壁ばかりに目が行きがちですが…
今日のおさらいは屋根。
屋根に使う漆喰、なかなか目にすることがありませんね。
屋根に漆喰。どこに使っているの?
ほーら、よーく探してください。漆喰がドコに使われているのか分かりますか?私たちの住まい。強風や豪雨から守ってくれるのが…瓦。
昔ながらの瓦屋根は棟瓦(むながわら)などが積まれた下には台土。そして熨斗瓦(のしがわら)や面土(めんど)、鬼首(おにくび)、雀口(すずめぐち)などの部分に漆喰が塗られています。
「棟(むね)」というのは屋根の頂上の部分。瓦を押さえ、積み上げられたものが棟瓦(むながわら)と呼ばれます。
面土(めんど)は写真で言えば瓦と壁の突き合わせの凹の部分。
三日月状の漆喰の部分です。
近年では「防災瓦」と称して一つ一つの瓦が釘やネジなどで固定されていますが、古くからの瓦は基本的に「積み重ねる」だけ。
地震や強風などの強いチカラが住まいにかかった際には、瓦が落ちることで部分的に壊れて力を逃す…
そうなんです。壊れるのが当たり前。それこそが千年以上かけて培われた「知恵」。
伝統構法で建てられた住まいの優れた所ですね。
屋根が壊れて住まいを守る
さて、漆喰は強いチカラが加わると瓦との接着が解けます。逆に固定されすぎていると屋根から力を逃すことが出来ないのです。
震災被害の写真などで、棟ごと、最悪の場合は屋根ごと一体になって崩れ落ちている建物がありますね。
それは釘やビス、セメントや樹脂などでガッチリ固められて、力が逃げない構造であったため。
下の写真のように壊れるのが「当たり前」の姿なのです。壊れることで家を守っているんですね。
住まいは屋根で呼吸する
今度は屋根の中に。天井に隠された小屋裏には…家の内外からの熱や湿気が籠りやすいものです。
重ねられただけの瓦と空気や湿気を通す土や漆喰を使うことで、屋根ごと呼吸していたわけです。
でも、現代では防水シートや接着剤、セメントなどが使われていますね。
そのまま対策を講じないままでは中の木も傷みやすくなってしまいます。
木は乾燥していてこそ長持ちするもの。
住まいの呼吸を助ける素材としても漆喰が役割を果たしていたわけですね。
瓦はお手入れが必要
瓦屋根はしっかりと積まれていてこそ私たちを守ってくれるもの。台風の後は瓦がズレたり、飛ばされていたりしていないか、ちゃんとチェックしましょう。瓦職人さんに頼んで手入れしてもらうのも大切なことです。住まいは昔も今もメンテナンスフリーではありません。
ちょっとした手入れの積み重ねで長持ちするのが、伝統工法で造られた住まいの長所です。