山林王・諸戸清六邸として大正12年に竣工した国の重要文化財です。
昨年、三重県で開催された全国古民家再生協会連絡会議の地区大会でのエクスカーションで訪れたのです。
洋館部分は鹿鳴館の設計で知られるジョサイア・コンドルによるもの。
で、誰もが「へぇ~、凄いね~」と感嘆しながら、観て歩きました。

が…、凄いのは設計者だけじゃないんです。
左官だって凄いんです。
だって、考えてみてください、コレ、木造ですよ!
なのに一見、石造りに見えるわけです。

ほら、4層の塔の部分も当然木造。
木造にモルタル塗って、最後にペンキで着色しただけなんです。
モルタルの目地と各々の質感。それらを精緻に行ったニッポンの左官をホメるべきでは?

見てください。真っ直ぐから湾曲へ。
一つ一つ、石に見立てたその目地の表情もしっかりと。

ただモルタル塗って線を引いただけでは、こうはならないんです。

中から塔の部分をみると…ほら、円い。丸ではなく円です。
しかも継ぎ目はありません。

分かりますか?円いんです。壁を歪みなく円く仕上げている、その左官の技。

付け加えていうならば、建具もガラスも円いんです。


当然、蔵戸は黒漆喰の磨き。
だいぶ表面が荒れているとはいえ、ほら、まだまだ顔が映るんです。

敷地内に建てられたお稲荷さんの土塀にも粋な瓦の波が…。

「誰も左官さんをホメてくれないな~」と日暮れに寂しくなった私でした。

六華苑は三重県桑名市にある国の名勝です。
桑名駅から徒歩20分。もしくは田町バス停下車徒歩10分。
普通車およびバスが停められる駐車場があります。
ゆっくりご覧になるのがオススメですよ。
左官さんの素晴らしい世界をしっかりとご覧になってください。