「昔の漆喰はクサかった」のだそうです。漆喰は臭いのが当たり前だと思うのですが?

2014/01/23

伝統素材

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「昔の漆喰はクサかった」という話があります。
しかし、一方で、漆喰の効能の一つに「消臭効果」があります。

いったいどういうことでしょうか?と、いうのが今日のおさらい。


漆喰に使われる海藻の臭い、それがクサかったというハナシです。

 その臭いの元となるのが「海藻のり」

ノリというと、どうしても接着剤を連想する方が多いですね。
確かに海藻から取ったノリを接着剤として使うこともあります。

しかし漆喰に必要なノリは作業性や保水性のため。
当然、多少の接着力も付与されますが、海藻を使った保湿パックや髪のコンディショナーと同じく、漆喰がしっとりとした状態で作業を続けられるのです。早く乾き過ぎるとキレイに塗り延ばすのも難しいですし、急激な凝集はひび割れも出やすいわけです。

ちなみに左官さんが言う「のり効きが悪い漆喰」と云うのは、本来「乾きが早い漆喰」を指して言う言葉です。

さて、そんな海藻の種類は…

一般的に、最も有名なものは「布海苔(ふのり)」。
布の「のり付け」にも使われていたことから「布の海苔」と書かれるという説も。
ただ現在、伝統工芸などには使われていますが、漆喰に使われるのはごく一部。
歴史的には瀬戸内産のものが使われていたようです。



逆に左官職人さんの中では一般的なものが「銀杏草(ぎんなんそう)」。
地域によっては「仏の耳」「耳のり」とも呼ばれますね。
現在の漆喰に最も使用されている海藻です。産地は北東北から北海道。ただし流通しているものの多くは韓国や南米のもののようです。



そして「角叉(つのまた)」。
銀杏草の仲間とも云われますが、全くの別物なんです。
特に関西地域では銀杏草のことも「ツノマタ」と呼んでいることが多いです。流通しているのは主に関東地域。産地は三陸といわれる岩手や宮城。



これらの海藻を使うには、鍋でコトコト炊いて、「のり」を煮出していました。
焦げ付かないように、そして不必要に海藻が壊れないように、ゆっくりと海藻のヌルヌル成分が溶け出させます。


そして網で漉すと、漆喰に最適な「のり」の出来上がり。



ただ、現在は残念ながらのりを炊く作業はなかなか見られないものになってしまいました。
代わりに、加工された海藻粉末を混ぜて使うのが主流になっています。


近年の漆喰では「のり」は「糊」。
接着性や硬化を強めようと様々な樹脂が用いられています。

でも、考えてみてください。
もともと使われてきた海藻のりは水に溶け自然に消えていくもの。
そして漆喰が固まるメカニズムは二酸化炭素を吸収すること。 
のりに接着力を期待する必要などなかったのです。

 樹脂で固められた漆喰、それは何なのでしょうか?


また、「臭い」という漆喰、それは海藻の臭いなんですが、逆に、海藻の臭いがしない漆喰があるからそう言われるんですね。

 臭いがしない漆喰、どんな漆喰なのでしょうか?


自然の素材をそのまま使うのが、本来の漆喰。
でも安心してくださいね。漆喰が乾いたあと、徐々に海藻の臭いは消えてしまいますから。

漆喰が呼吸をすることで、その中に取り込まれてしまうからです。
また、臭いの元が酸性物質であれば、反応して別のモノになることもありますね。