伝統素材を作るために休みはありません

2013/08/13

伝統素材

t f B! P L

多くの方が夏季休暇をとる今週ですが、伝統素材にたずさわる方々は休みなく。

この猛暑にも、どこかの住まい、どこかの文化財に必要とされる素材を休むことなく作り続けています。

 

と、いうわけで今日も漆喰のおさらいをしましょう。

 

大事な伝統素材の原料。…「手間をかける」というでしょう?

 

様々な方の手を経て、時間をかけて出来上がるのが、手間のかかった素材、伝統素材です。 

今日はその中から「すさ」について。 


 

すさは漢字でくさかんむりに切と書きます。

他に「寸紗」などと書かれることもあるようですね。

 

どういったものかと云うと…

 

こんなカンジ。

わかりやすく言うなら植物の繊維を細かく切り刻んだものです。

水で練られた石灰の中に植物繊維がつなぎ役として働くことで、

収縮や外力から発生するひび割れを防ぎます。

また、すさの硬さや長さによっては作業性も良くなります。

繊維の層が出来れば保水効果もありますね。

 

麻が原料ならば「麻すさ」、ワラであれば「わらすさ」。

紙を使うときは「紙すさ」など、その原料の名をとって呼称されます。

 

様々な繊維が使われる中、漆喰に最も多く用いられてきたのは「麻」。

とくに古来より使われてきた品種のものは、強くてしなやか。

そして主原料である石灰のアルカリにも強い。

建築材料としてもうってつけの素材なわけです。

 

が、ご注意…。現在は様々な素材が通しています。

水やアルカリに弱いものも売られていますから…。

漆喰を作って練り置きするとアララ。溶けてます。

 

また、すさとして使われることが多い「麻すさ」には様々なものがあります。

本すさ  

 

大麻を使ったすさです。本麻すさとも。「大麻」の名の通り、ほぼ入手は不可能です。漆喰のすさとして最高級とされる生濱すさ(きはますさ)もこの素材です。原料が原料ですので、文化財などで使われているだけです。

 

南京すさ 

 

南京袋を洗浄してリサイクルされたすさです。中塗りなどの下地や屋根漆喰に使われています。「南京袋」は南京豆(落花生)の袋。江戸初期には中国から輸入されていました。だから、結構歴史の古い素材なのです。

 

晒しすさ 

 

サラシスサ。国内の「麻すさ」のほとんどがコレです。名前の通り、南京袋を漂白洗浄してリサイクルされたすさです。原料となるのはジュート(黄麻・綱麻)やケナフ。

 

白毛すさ 

 

現在、原料はほとんどがサイザル麻のようです。サイザル麻は麻ではなく竜舌蘭という種類の植物。あまり水には強くありません。中塗りなどの下地や屋根漆喰に使われています。

 

マニラすさ

 

フィリピンの首都の名の通り、フィリピン原産の芭蕉の仲間です。軽くて強い繊維であるため、船のロープとして使われ、そのリサイクル品として流通されていましたが、 現在はほぼ入手不能です。なお一般にマニラとして売られているものの中身は、 ほとんどがサイザル麻です。マニラ麻(アバカ)は国外持ち出しが制限されていますから。

 

白雪すさ 

 

過去はともかくとして、「白雪」は商品名です。東日本、西日本それぞれで、それぞれの白雪が通しています。原料素材はジュートやケナフですね。ですから、一般名称としては晒しすさに該当します。

 

 

すさは、漆喰にとっては絶対に必要な素材です。

 

ですが、伝統技法を守る「すさ職人」さんは、現代では数少なくなってしまいました。

しかし、その方たちの頑張りで、今も大切な国の宝が守られているわけです。