「麻すさ」に続いて、今日は「海藻のり」のおさらい。
ノリというと、どうしても接着剤を連想する方が多いのですが…
当然、多少の接着力も付与されます。
しかし、漆喰に必要なノリは作業性や保水性のため。
海藻を使った保湿パックや髪のコンディショナーと同じく、
漆喰がしっとりとした状態で作業を続けられるのです。
早く乾き過ぎるとキレイに塗り延ばすのも難しいですし、
急激な凝集はひび割れも出やすいわけです。
ちなみに左官さんが言う「のり効きが悪い漆喰」と云うのは
本来「乾きが早い漆喰」を指して言う言葉です。
さて、そんな海藻の種類は…
一般的に、最も有名なものは「布海苔(ふのり)」。
布の「のり付け」にも使われていたことから
「布の海苔」と書かれるという説も。
ただ現在、伝統工芸などには使われていますが、
漆喰に使われるのはごく一部。
歴史的には瀬戸内産のものが使われていたようです。
左官職人さんの中では一般的なものが「銀杏草(ぎんなんそう)」。
地域によっては「仏の耳」「耳のり」とも呼ばれますね。
現在の漆喰に最も使用されている海藻です。
産地は北東北から北海道。
「角叉(つのまた)」。
銀杏草の仲間とも云われますが、全くの別物。
流通しているのは関東地域が多いです。
産地は三陸といわれる岩手や宮城。
これらの海藻を鍋でコトコト炊いて、「のり」を煮出します。
そして網で漉すと、漆喰に最適な「のり」の出来上がり。
ところが、こんな作業を行えるだけの
環境や費用がなくなっているのも現実です。
なのでコレを使うわけです。
正体は粉末海藻。
炊いて出来たノリと同様、加熱したものを乾燥させて…
見てください。加熱後の海藻を天日干しする姿。
海藻の状態を見極めながら
最も左官さんが作業しやすいように加工する…海藻職人さんですね。
しかし、近年の漆喰では「のり」は「糊」。
接着性や硬化を強めようと様々な樹脂が用いられています。
考えてみてください。
もともと使われてきた海藻のりは水に溶け自然に消えていくもの。
そして漆喰が固まるメカニズムは二酸化炭素を吸収すること。
では樹脂で固められた漆喰、それは何なのでしょうか?