そろそろ移動のシーズン。辞令がすでに出ている方もいらっしゃるようで、引っ越しの準備とともに、新しい環境への準備も進められています。
こんな移動の時期、よくいただく相談がDIY。
「新居に漆喰を塗りたい。」と思う方が多いようですよ。
「漆喰を自分で簡単に塗る方法は無いですか?」とよく訊かれます。
あります。簡単ですよ。
――― 「綺麗に塗らないこと」です。
要するにただべたべたと塗りつけるだけ。そう。塗るだけならば「誰でも」塗れるのです。
ところが、皆さんの望みは違いますよね? キレイに塗りたいんですよね??
でも、プロの左官職人さんは、日々のたゆまぬ研究と努力で、様々な左官材料の仕上げ方法を習得されていますし、当然、高度な技術が要求される仕事もあります。
実際、左官さんの中にも、漆喰をしっかりと塗ることができる職人さんと、そうでない職人さんがいるのです。
皆さんの望みはDIY。職人さん達と同じコトが、そんな「ぶっつけ本番」で出来るわけがないのです。だって鏝(こて)ですら持ったことないでしょう?
左官職人の誇り高い技術は、難しいからこそ受け継がれてきた技術。もっともオーソドックスな漆喰の仕上がりは「平滑で艶消しの押さえ仕上げ」というものです。
正直、シロウトにはそれはあきらめていただくほかありません。修練とカンが必要となりますから、独学でどうにかなるものでもありません。
さらに、漆喰という素材はペンキのように、ただ平らに塗ればキレイに仕上がるものでもないのです。
手順を踏んで塗り重ねていく中で、乾燥の塩梅を見計らいながら。
塗りあがった後もその乾燥の様子を見守ってやる。
― とにもかくにも手のかかる素材なのです。
漆喰に限らずぶっつけ本番で出来るほど、日本の伝統素材は甘くありません。
ただ、近年DIY用の漆喰というものも販売されています。
多少の樹脂などの化学製品が含まれている場合がありますが、それなりに良いものです。
「どうしても自分のチカラだけで!」とおっしゃる方はそちらを。
素材にこだわる方は、左官さんにお仕事をお願いしながら、「どこか自分でも塗ってみたい」とワガママを言ってみるのも良いかもしれません。
お手伝いしながら、とてもキビシイ指導を受けながら、自分で仕上げた壁。それでも、皆さんがそれなりに納得できる壁になると思いますよ。