壁 と 歴史

2020/03/26

おさらい

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下の写真、新旧を代表する2種類の「壁」の構造です。




左はサイディング。
現在、多くの住宅で用いられています。昔ながらの工法に比べて細い木材を使いながら筋交い(斜材)や金物で補強。柱と柱の隙間に断熱材を入れて、外壁板との間には内部に水が入ってこないように透湿防水紙を貼っています。

右は土壁。
伝統工法ですね。4寸角以上の太めの柱の間に貫(水平材)があります。縦横に編まれた竹に土を塗り込み、最後に漆喰で仕上げられています。


現在の建築現場では圧倒的にサイディングが多いですよね。
逆に、土を塗る工事現場は探しても見つからないほど珍しくなりました。


 さて、皆さんはこの2つの壁の違いが分かりますか?


現代の工法では
比較的細めの柱を使う代わりに筋交いなどを入れて補強しています。そして、内部に水が入った時に雨漏りの原因とならないように防水紙が貼られています。

そのままだと断熱効果もないので、壁の中に断熱材も入れる。
外壁板と板の間はシーリング材を充填して防水する。

 …一見、機能的ですが、簡易的といった印象も否めません。


そして土壁
構造を支えるしっかりした柱の間に貫が入っているだけ。竹を縦横に網目のように入れているのは、竹小舞という、土壁を塗りつけるための知恵です。

土を何層かに塗り重ね、最後に漆喰で保護。古民家などで土壁のままのものもありますが、漆喰を塗ることで、雨に壁が流されにくくなるので、より壁が長持ちします。
断熱は分厚い土と空気によりしっかりと行われます。
現代ものに比べると防水の能力は低いですが、その代わりに壁に含んだ水分が環境をコントロールしてくれます。


住まいにとってどちらが望ましいか?
 機能だけなら現代のもののほうが良いのかもしれません。
 お財布に優しいのも現代のものでしょう。


では、住まう人にとっては??

 ― 答えるまでもないですよね(笑)


土壁を基本とした伝統的な工法は、1000年を超えて我が国で培われてきた「技術」なのです。

 歴史が証明する。

といっても言い過ぎにはならないでしょう。

そして、半世紀、もしくは100年過ぎたあとでも、住まいから発生する「建築廃材」は廃材とはなりません。ほとんどすべてのモノが再生可能、または自然に還すことの出来る資財なのです。


だからこそ、様々な分野で「伝統工法」「伝統構法」が見直されているのです。
伝統素材、それは単なる「過去のモノ」ではありません。


ですが、全ての建物に「土壁」を塗ることは出来ません。

昔と違い、建物を建てるときには様々な制約がありますね?
「軒をあまり張り出せない」など、構造上、どうしても壁に高い防水性を求めなければならないこともあります。そこに漆喰なんて塗ったら何年も経たずに下地が傷んでしまいます。

 では、どうするか?

ワタシは「出来る限り」で良いのではないか?と考えています。
全部は出来なくとも、出来る部分だけ。

最も大切なコトは

 「作る側も、住まう側も、それを納得して住まいを造ること」

ではないでしょうか?