「すさ」のお話 なんどもおさらい

2017/07/20

おさらい

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様々な伝統素材。その歴史も製造技術も、伝えられる中で磨かれながら淘汰されてきたわけですね。

さまざまな素材。私もひたすら勉強です。中でも「すさ」については奥深い素材の秘密を教わるたびに新たな発見があるわけです。

というわけで今日は「すさ」のおさらい。



漆喰や土壁に大事な原料。
手間をかける」というでしょう?様々な方のを経て、時をかけて出来上がるのが手間のかかった素材、伝統素材です。
今日はその中から「すさ」です。すさは一般に漢字でくさかんむりに切と書きます。



他に「寸紗」などと書かれることもあるようですね。

どういったものかと云うと…


こんなカンジ。
わかりやすく言うなら植物の繊維を細かく切り刻んだものです。

水で練られた石灰の中に植物繊維がつなぎ役として働くことで、収縮や外力から発生するひび割れを防ぎます。また、すさの硬さや長さによっては作業性も良くなります。繊維の層が出来れば保水効果もありますね。

麻が原料ならば「麻すさ」、ワラであれば「わらすさ」。紙を使うときは「紙すさ」など、その原料の名をとって呼称されます。

様々な繊維が使われる中、漆喰に最も多く用いられてきたのは「麻」。

とくに古来より使われてきた品種のものは、強くてしなやか。そして主原料である石灰のアルカリにも強い。建築材料としてもうってつけの素材なわけです。

が、ご注意…。現在は様々な素材が流通しています。

水やアルカリに弱いものも売られていますから…。
漆喰を作って練り置きすると溶けるものがあるようです。


また、すさとして使われることが多い「麻すさ」には様々なものがあります。
本すさ  
大麻を使ったすさです。本麻すさとも。「大麻」の名の通り、ほぼ入手は不可能です。漆喰のすさとして最高級とされる生濱すさ(きはますさ)もこの素材です。原料が原料ですので、文化財などで使われているだけです。
南京すさ 
南京袋を洗浄してリサイクルされたすさです。中塗りなどの下地や屋根漆喰に使われています。「南京袋」は南京豆(落花生)の袋。江戸初期には中国から輸入されていました。だから、結構歴史の古い素材なのです。
晒しすさ 
サラシスサ。国内の「麻すさ」のほとんどがコレです。名前の通り、南京袋を漂白洗浄してリサイクルされたすさです。原料となるのはジュート(黄麻・綱麻)やケナフ。
白毛すさ 
現在、原料はほとんどがサイザル麻のようです。サイザル麻は麻ではなく竜舌蘭という種類の植物。あまり水には強くありません。中塗りなどの下地や屋根漆喰に使われています。
マニラすさ
フィリピンの首都の名の通り、フィリピン原産の芭蕉の仲間です。軽くて強い繊維であるため、船のロープとして使われ、そのリサイクル品として流通されていましたが、 現在はほぼ入手不能です。なお一般にマニラとして売られているものの中身は、 ほとんどがサイザル麻です。マニラ麻(アバカ)は国外持ち出しが制限されていますから。
白雪すさ 
過去はともかくとして、「白雪」は商品名です。東日本、西日本それぞれで、それぞれの白雪が流通しています。原料素材はジュートやケナフですね。ですから、一般名称としては晒しすさに該当します。

すさは、漆喰にとっては絶対に必要な素材です。
ですが、伝統技法を守る「すさ職人」さんは、現代では数少なくなってしまいました。

しかし、その方たちの頑張りで、今も大切な国の宝が守られているわけです。