漆喰を語る上で、避けられないのが「大麻」の問題。

2014/05/26

伝統素材

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この写真。
何度もお見せしていますが、今日もこの件についておさらい。




上の写真、でんでん協会の伝統素材セミナーにお越しになったことのある方は、触ったことがありますね?

 「皮麻(かわま)」といいます。

文字通り、大麻の皮を剥いだものです。

そうなんです…大麻。
ところが珍しい話ではないんですよ。元々我が国には多くの麻が植えられていたのです。用途は麻糸、麻ひも、麻布、麻の衣服、細かな繊維は和紙に。いまだに凧揚げに麻糸を使う伝統行事も残っています。

大凧揚げの糸車。コレに巻かれているのも大麻の糸でした。


話は漆喰に。
漆喰は消石灰に海藻のり、そして麻などの植物繊維を練りこんで造られます。
この植物繊維を「(すさ)」と呼びます。


そもそも麻すさの中でも最上級とされたのが大麻が使用された「生濱すさ(きはますさ)」や「ポンキ」と呼ばれるもの。また、大麻が原料であるすさのことを「本すさ」と呼んでいました。

日本古来の漆喰は、自生する植物を素材として作られていたのですが、現代では再現が難しいものの一つです。原料となる麻の栽培は法律で厳しく制限されていますから。


と、いうわけで一般に流通している漆喰には、主に海外から輸入されるコーヒー豆やコショウが入っていた麻袋、「南京袋」がリサイクルされたものが使用されています。

麻の種類でいえばジュートやケナフ、サイザルなど。
我が国ではほとんど自生していない海外の素材に頼らざるをえないのです。



 「全て国産原料!」「昔から変わらない漆喰!」「日本の伝統!」

な~んて謳っている漆喰が多く流通していますね!?
実際には中身が違うのですから正直に「本来のモンではない。」と、どこかで説明すべきです。

ただしごく僅か、神事や伝統工芸や伝統行事、文化財などに使われているものがあります。さすがにそれは、簡単に入手できるものでもなく、価格も想像をはるかに超えるものですが…。

 とにもかくにも「麻すさ」ただの糸くずではないのです。

原料となる繊維の種類や長さ、太さ、しなやかさ、強さ、様々な条件によって出来上がった漆喰は、仕上がりも強度も全く違うものになります。

こればっかりは素材に触れた方にしか分かりません。なので、セミナーや勉強会などには、皮麻に限らず、様々な原料素材を持参するようにしています。

素材との対話。伝統素材の面白さの一つだと思います。

商業利用や伝統工芸のために…と大麻を合法化したいと運動している方もいると聞いていますが…ダメですよ。不逞の輩が多いんですから。