奈良と墨と漆喰と

2014/01/27

伝統素材

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たびたび紹介してきた伝統素材と伝統建築の古都・奈良。
数々ある素材の中でも、奈良は墨の産地としても有名です。

奈良墨とも呼ばれる、油煙墨は油煙を燻らせて作った煤と膠を練り合わせ、成型、乾燥、磨きなどの工程を経て作られるもの。

現代では煤を作ることが難しくなっており、また、伝統的な奈良墨を作っている方も少なくなっていると聞いています。

そんな中、大切に伝統技法を守っておられることで、全国的にも有名なのが古梅園さん。

普段、墨を使わない方…ほとんどの方がそうですね。
それでも奈良へ行った際には、外からでも見ていただきたいお店なんです。



伝統建築がそのまま残されている店舗の佇まいがとても素敵です。

壁に塗られているのは黒漆喰。
左官材料の中でも製造が大変難しいものなんです。

漆喰の主成分は消石灰。真っ白なものが主成分なのです。
そこに黒いものを混ぜると?

ミクロなイメージとしてはこんなカンジ。
石灰の粉と黒い粉が混じりあうことで、結果的に「黒く」見えているわけです。


 ところが、劣化して黒い顔料が抜け落ちると?
主原料である漆喰の白が勝つわけです。


塗料が色あせてしまうのも、漆喰が色あせやすいのも、同じ理由からです。
色の粉が落ちると、主原料の色が勝ってしまうわけです。

また、黒漆喰に限らず、漆喰に色をつける際には、その着色顔料を可能な限り分散混合させなければならないのですが、上記の店舗の黒漆喰、お店の方に聞くと100年近く前に塗られたものとのこと。近くで見ると色あせては見えますが、逆に風格さえ感じられるほど素敵です。

でも現在、その原料の入手が難しくなっています。
左官用墨は「松煙(しょうえん)」と呼ばれる松を燃やして作られたものが一般的。
ただ、昔ほど分散が良いものがなかなか手に入らないようなのです。
さらに「黒漆喰」自体を作ることの出来る左官さんも少なくなってきたようですね。

だからといって、コレはご法度。
黒漆喰の補修に黒い塗料。


バリバリ剥げてしまっている塗料よりも
かえって色あせた漆喰の方が見栄えがいいですよね。