大事な原料。「手間をかける」というでしょう?
様々な方の手を経て、時間をかけて出来上がるのが手間のかかった素材、伝統素材です。
今日のおさらいはその中から「すさ」です。
すさは漢字でくさかんむりに切と書きます。
他に「寸紗」などと書かれることもあるようですね。
どういったものかと云うと…
こんなカンジ。
わかりやすく言うなら植物の繊維を細かく切り刻んだものです。
水で練られた石灰の中に植物繊維がつなぎ役として働くことで、収縮や外力から発生するひび割れを防ぎます。また、すさの硬さや長さによっては作業性も良くなります。
繊維の層が出来れば保水効果もありますね。
どうにもイメージできない方はお好み焼きを想像してみてください。
キャベツや焼きそばが入ることで切れにくくなりますよね。ボリュームも出ますけど(笑)
さて、もう一度漆喰の「すさ」。
麻が原料ならば「麻すさ」、ワラであれば「わらすさ」。紙を使うときは「紙すさ」など、その原料の名をとって呼称されます。
様々な繊維が使われる中、漆喰に最も多く用いられてきたのは「麻」。とくに古来より使われてきた品種のものは、強くてしなやか。そして主原料である石灰のアルカリにも強い。建築材料としてもうってつけの素材なわけです。
が、ご注意…。現在は様々な素材が流通しています。
水やアルカリに弱いものも売られていますから…。
そんなスサを使った漆喰を練って置いておくとアララ、溶けてます。これじゃ入れた意味がないですね。
また、すさとして使われることが多い「麻すさ」には様々なものがあります。
本すさ | 大麻を使ったすさです。本麻すさとも。「大麻」の名の通り、ほぼ入手は不可能です。漆喰のすさとして最高級とされる生濱すさ(きはますさ)もこの素材です。原料が原料ですので、文化財などで使われているだけです。 |
南京すさ | 南京袋を洗浄してリサイクルされたすさです。中塗りなどの下地や屋根漆喰に使われています。「南京袋」は南京豆(落花生)の袋。江戸初期には中国から輸入されていました。だから、結構歴史の古い素材なのです。 |
晒しすさ | サラシスサ。国内の「麻すさ」のほとんどがコレです。名前の通り、南京袋を漂白洗浄してリサイクルされたすさです。原料となるのはジュート(黄麻・綱麻)やケナフ。 |
白毛すさ | 現在、原料はほとんどがサイザル麻のようです。サイザル麻は麻ではなく竜舌蘭という種類の植物。あまり水には強くありません。中塗りなどの下地や屋根漆喰に使われています。 |
マニラすさ | フィリピンの首都の名の通り、フィリピン原産の芭蕉の仲間です。軽くて強い繊維であるため、船のロープとして使われ、そのリサイクル品として流通されていましたが、 |
白雪すさ | 過去はともかくとして、「白雪」は商品名です。東日本、西日本それぞれで、それぞれの白雪が流通しています。原料素材はジュートやケナフですね。ですから、一般名称としては晒しすさに該当します。 |
すさは、漆喰にとっては絶対に必要な素材です。
ですが、伝統技法を守る「すさ職人」さんは、現代では数少なくなってしまいました。
しかし、その方たちの頑張りで、今も大切な国の宝が守られているわけです。