以前「住育ライフ」というサイトに寄稿したものを改めて。
住育ライフは名前の通り「住まいの教育」を目的としたサイト。様々な専門家がその専門分野について寄稿しています。
今日は伝統素材ではなく、新しい素材。
ビニルクロスについてのオハナシです。
シックハウスの原因は?
近年、住まいづくりに欠かせないコトバといえばシックハウス対策。 正しくはシックハウス症候群と呼ばれるものです。 新築した家やリフォームした部屋などに入ると
- 目やのどの痛み
- 呼吸困難
- 頭痛、めまい
- 皮ふへの刺激
- 吐き気、気分が悪い
などの症状が現れるというものです。
原因物質として、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、スチレン、パラジクロロベンゼン、クロルピリホス、テトラデカン、フタル酸ジ-n-ブチル、フタル酸ジ-2-エチルヘキシル、ダイアジノン、フェノブカルブなどがあり、特にこれら13の揮発性有機化合物(VOC)に対して厚生労働省が濃度指針値を出しているわけです。
揮発性有機化合物。
ドコからか、ナニかの物質が揮発して、家の空気中に漂っているんです。 これが私たちのカラダに悪さを起こすわけですね。
ホルムアルデヒドだけが悪者ではないということです。
材料から出て来る成分が悪い?
原因物質を含んだ悪者として名前を挙げられるのが「ビニルクロス」と「接着剤」ですね。 樹脂をシート状に加工したものがビニルクロス。 液体の樹脂を塗りつけ固めるものが接着剤。 …どちらも樹脂が加工された製品です。ところが樹脂だけだとどうしても使いづらい。使いやすくする必要があるんです。 そこで様々なモノを添加しています。 例えば… 溶かすために有機溶剤。柔らかさを保つための可塑剤。
便利に使うために加えられた様々な化学物質のおかげで使いやすくなっているんですね。で、それらから色んなモノが揮発しているのがシックハウス症候群の原因に。
ビニルクロスを貼った部屋は?
少し前まではほとんどの方にとって「快適だった」はずなんです。 簡単に言えば“水や空気を通さないシート”で覆われた箱の中に住んでいることに最近までは何の違和感も抱かなかったわけですし、屋内に結露してカビが生えるほどの湿度があるなら最近まではあきらめて除湿や換気をしていました。 ・・・当然、体に変調をきたす方もいらっしゃったわけですけど。ビニルクロスって便利なんですよ。 基本的に水を 通しませんから、拭き掃除でお手入れ簡単。塗り壁だと染み込んで取れなくなる油汚れも洗剤をつけてサッとひと拭き。
住まいをキレイにしておきたい奥様にはオススメの内装材です。
素材と上手く付き合っていきましょう
住まいづくりにあたって、漆喰などの塗り壁にこだわる方が多くなりましたね。けれどもコストの関係で「全てを塗り壁」というわけにはいかないケースも多く聞いています。また、どうしても汚れてしまう台所などはメンテナンス性を重視することも必要です。近年ではシックハウス症候群への対策として化学物質の含有量の少ない、健康への配慮がなされたビニルクロスやビニル以外の樹脂を使ったクロス、紙を使ったクロスなど様々な製品が上市されています。貼りつける糊についても同様です。 家族に特に配慮しなければならない方がいらっしゃらないのであれば、それらの製品で十分対応できることも考えられます。
・・・ビニルクロスを目のカタキにする必要はないんです。費用やライフスタイルに合わせた素材選び、これを適材適所とはいいません。あえて言うなら「無理をしない」ということですね。
ビニルクロスが市場に出て約50年。
ようやくその使い方を考える余裕が出てきたのかもしれません。