我が国には 繊維の職人 がいる

2012/03/19

伝統素材

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漆喰には、素材自体の強化と作業性の向上などのために

植物繊維が混ぜられます。

 

その材料を「すさ」(=?)といいます。

 

「麻すさ」についてのネットなどの記述を見ると…

「麻くず」「糸くず」と書かれていることが多いようです。

 

が、見てわかりますよね?

とてもクズとは言えない。言ってはならない大変なシロモノなのです。

 

 

さて、今日は麻すさの原料、麻という素材について、おさらいします。

 


漆喰に使われてきた麻にはいくつかの種類があります。

まずはその種類から。

 

<大麻・苧麻>

我が国で古くから使われていた素材です。

 

大麻は悪用する輩が後を絶ちませんね。

もともとはその茎の皮を使って繊維を取り出していたのです。

悪いことに使われるのは葉の部分。

主にインド種のモノがその悪事の道具です。

 

苧麻はイラクサ。

山遊びしたことのある方なら、服にペッタンと貼った

シソみたいな葉っぱのアレです。同様に茎の繊維を使います。

 

<海外からの麻>

近世になって、亜麻やマニラ麻、ジュートなどが輸入されました。

 

亜麻色の髪や亜麻仁油で知られる亜麻は

明治初頭の北海道開拓からの栽培です。

今はヨーロッパ産が多いようですね。

リネン麻と呼ばれるのは亜麻のことです。

 

マニラ麻は名前の通りフィリピン原産ですね。

耐水性があり、船のロープなどで使われていたものを建材用に加工していました。

ところが最近、本物のマニラはほとんど通していません。

 

現在「マニラ」として売られている繊維はほとんどがサイザル麻。

荒物屋で売っているマニラロープもサイザル麻で出来ています。

気をつけてください。耐水性が格段に悪いですから。

 

南京袋やドンゴロスと呼ばれる麻袋に使われているのがジュートまたはケナフ。

ジュートの主な産地はインドバングラデシュ

黄麻や綱麻と書かれます。よく売られている麻紐もコレです。

 


 

<国産原料はまず手に入らない>

実は国産の素材は全く流通すらしていないのが現状です。

一部に「国産原料を使った漆喰」が売られているのですが…

不届き者の畑から大麻の繊維を入手したのでしょうか?

 

…そんなことは無いですよね。

 

 

ちなみに国産の麻は無いこともありません。

実は国内で許可を受けて麻の栽培をしている地域があるのです。

が、目的は伝統工芸や神事、そして文化財などのため。

左官向けにはほとんど手に入りません。

 

大幣に結ばれているのも麻です。 

 

 

それでも我が国には輸入された原料を

一心不乱に加工してくださる麻すさの職人さんがいるのです。

 

原料がドコのモノであれ

我が国伝統の技術の結晶であることには変わりありません。

 

大事な大事な、伝統素材。

職人さんの努力で助けられています。