おさらい 漆喰に混ぜる伝統素材

2012/01/03

おさらい

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おさらいしてきた通り、漆喰は消石灰と麻と海藻から。

ここにさらに加えられる素材があります。

それが「油」。

 

今日は油についておさらいです。

 


雨から家屋を守るための伝統素材として

意外に知られていないのが「油」です。

和紙に浸み込ませた「油紙」は傘に塗られることで水を弾きました。

 

写真素材 PIXTA
(c) sakintyo写真素材 PIXTA

 

 

水に触れやすい木に塗ることで、腐朽菌の繁殖を防ぎました。

同じように、漆喰に油を加えることで、漆喰の耐水性能を上げていました。

勘違いしている方が多いのですが、

漆喰には防水性は無く、かえって吸い込みやすい素材であること

これまでも説明してきましたね。

 

ただ、水に溶けて流れてしまうことがないので

土壁の上から塗ることでそれが流れ出すことを止めることが出来ました。

 

さて、そんな伝統的に使われてきた油。

漆喰に加える油の種類で分類してみましょう。

 

菜種油  

 

食用でも有名ですね。

最も多用されている漆喰油です。

 

桐油 

 

桐ではなく、「油桐」の実から採った油。

今でも伝統工芸では珍重されていますね。

漆喰では島根や鳥取などを中心に。

 

荏油 

荏胡麻油

 

荏胡麻の種から採った油。

歴史的には、菜種油が使われるようになるまでは、

この油が食用油だったそうです。

韓国焼肉のお店で葉っぱが出てきますね。

 

亜麻仁

 

♪亜麻色の長い髪…で知られる亜麻の種から採取したもの。

油絵の具にも使われていますね。

亜麻の茎の繊維は麻製品として使われています。

リネンといったら亜麻のことです。

 

魚油

 

名前の通り、動物由来の油。

イワシなど、青魚を煮詰めて採っていたそうです。

漁村で多用されていたようです。(ワタシの地元もそうです。)

 

鯨油

 

クジラから採った油。外国が行っていた捕鯨の目的も油でした。

ペリーさんの黒船来航時に開港させられた表向きの目的も

捕鯨船の給油のためでしたよね?

今ではかなり入手が難しくなっていますが…。

 

 

 

油には酸化して固まりやすいものと、そうでないものがあります。

油紙などに使われてきたのは固まりやすいもの。

 

 これを乾性油といいます。

 

桐油や荏油、亜麻仁油などがそうなのですが

漆喰に使う場合は混合がしっかりしていないと油ムラが出来て

黄色または茶色っぽいムラが出来ることがあります。

 

また、最もポピュラーな菜種油。

「菜の花」の正しい呼び方は「アブラナ」。 名前の通り「油菜」なのです。

 

 

「伝統素材」として比較的新しいのは亜麻仁油や鯨油でしょう。

 

特に、亜麻仁油の原料となる亜麻は比較的低温の環境が必要です。

国内での生産は明治初頭の北海道開拓から。

たまに「古墳時代から使われてきた」なんて書いてある資料がありますが

…違いますよね。