お鍋と漆喰

2011/12/13

よもやま

t f B! P L

冬本番。お鍋が美味しい季節になりましたね。

 

あごだし味噌風味キムチ鍋

 

最近では、東西や地方による食文化の違いが

テレビ番組などで良く知られるようになりましたね。

 

中でも各地で食事して、口にする食事の中でも明らかに異なり、

それに不思議な違いが現れるもの。それが「出汁」(だし)です。

 

 昆布・鰹節・鯵節・いりこ・煮干し・あご・焼き干し・干し椎茸などなど。

 

味のベースとなるダシは、地域によって全くその傾向が異なります。

関西の昆布だし、瀬戸内のいりこだし、サバ節のど~んと効いた蕎麦だし。

沖縄のお弁当には黄金色の鰹だしのスープが付いていたり…。

料理の味だけでなく香り、そしてその印象もガラッと変わるのがダシですね。

 

 

同様に??

 

漆喰の「のり」として使う海藻、その種類によって全く性状が異なってくるのです。

漆喰の海藻については先日の説明を。

 

と、いうわけで今日は漆喰に使われる海藻について少しおさらい。

 


全国で調べてみると銀杏草でも角叉でも布海苔でも、

同じ種類であったとしても、産地や時期によって大きく違うんです。

 

全国で海藻を探しているうち、各地での利用状況も気になりました。

 

そこで、行く先々で簡単な質問を。

 

 「炊きのりの海藻は何を使っていましたか?」と。

 

そうすると、なんとなく傾向が出てきます。 
 

  • 日本海沿いの東北から新潟、北陸にかけて銀杏草。
  • 太平洋側の東北は当然、三陸なので角叉。
  • 北関東は角叉。
  • 関東甲信はどっちかというと角叉。
  • 関西は銀杏草。京都は布海苔も。
  • 山口から山陰にかけては布海苔。
  • 九州は銀杏草。

 

いずれも、どちらかというと多い。というヒアリング結果を踏まえています。

原因は?左官文化と昔の流通経路が影響しているのではないでしょうか?

キーワードは北前船かもしれません。

 

北前船 - 写真素材
(c) ベルゼルガ写真素材 PIXTA

 

昆布ロードとも呼ばれた西回り航路。

もっとも古く栄えた海運ルートといわれています。

 

主な寄港地は

松前~酒田~新潟~三国~小浜~美保関~萩~下関~広島~尾道~鞆~大阪。

 

各地の産物が大阪に集まり、天下の台所と呼ばれたわけで…。

だから、今でも大阪の出汁は昆布が基本。

 

後の江戸時代には東北からの東回り航路が確立しましたが

主に米を江戸に運ぶ目的でした。

出しの基本は鰹出汁。鰹武士なんて言葉もありますね。

じゃあ、江戸まで昆布が届かなかった?

 

そうではなく、水質の違いだったそうです。

以前テレビで見ましたが、関東ローム層の影響で水の硬度が高く、

美味しい昆布出汁がとれないそうなんです。

 

 

再び漆喰に戻りますが、

左官職人さんが手軽に入手できる海藻がなんであったか?

ということが大きく影響しているように思います。

なんとなく調べてみた結果が回船航路と一致するのですから。

 

西回り航路は銀杏草、東回り航路は三陸角叉。

瀬戸内産の布海苔はその周辺から京都まで。

 

しっくり来ませんか?

さらに云うと、昔からの海藻業者さんや、建材商社さんが

どの地域に海藻を販売していたか?ということにも影響するようです。

 

漆喰にも地域の味。

ただ、今では残念ながらその味も失われつつあります。