私の住む大分県には誇るべき伝統素材があります。
全国でも大分県でだけ栽培されている伝統素材、それが「七島藺(しちとうい)」です。
七島藺の「藺」は藺草(いぐさ)のい。
畳表(たたみおもて)に使われるあのイグサです。
畳なんて珍しくないでしょ?と言われそうですね。
ところが、この七島い…一般に畳表に使われているい草とは種類が違うのです。
備後表、肥後表など名の知られた畳表がありますが、この七島いで織られた畳表は「琉球表(りゅうきゅうおもて)」と呼ばれています。
違いはこの姿。断面が三角です。
植物学的にもい草はイグサ科。七島いはカヤツリグサ科に属する植物でい草とは異なる品種なのです。
違いはそれだけでなく、丈夫で長持ちすること。ですから、い草の畳と使い分けられ、客間でなく居間、お店の店先などに使われていたようです。
関東にある300年続く古民家を訪れた際も、お勝手と呼ばれる通用口は七島いの畳。
身分の高いお客様をお迎えする式台付きの玄関から入った座敷にはい草の畳が敷かれています。
現在、大分県でもごく数件の農家さんで栽培されているだけ。
製品として出荷される畳表は2千枚が限度だそうです。その希少価値から値段も高く、行き先はほとんどが都会のお金持ちの所へ。立場逆転です。琉球表のほうが高級な畳になってしまったそうです。
また、最近流行りの縁(へり)の無い畳…一般に「琉球畳」と呼ばれていますね?
ところが、本来は琉球表が使われた畳を琉球畳と呼ばなければならないのだそうです。これも世の流れなのでしょうか。
また、強いことから昔は柔道場の畳にも使われていました。
現在の柔道場にはビニールが貼られたものが使われています。審判規定にも畳またはそれに類するもの。として書かれているようです。
先日、「くにさき七島藺振興会」の方々が地域資源の見直しと販路開拓のために、七島いを使った柔道畳を(現代風に?)開発。県内の大学の柔道場1試合場分をビニール製から七島い製のものに変え、その耐久テストを始めました。
伝統素材の見直し…成功されることを祈っています。
さて、立夏を迎えたこのシーズン。
稲の苗よりもすこし早く、5月の連休からは七島いの田植えが始まる時期です。
昨年は温度の関係でなかなか苗が太らず、雨にたたられ病気対策に悩む…といった状況でしたが、今年は良い1年となるといいですね。
田植えが始まったばかりですが、豊作をお祈りします。