今日の漆喰にまつわる常識は漆喰の防水性。
漆喰には防水性能はありません。
よくあるキャッチコピーですが…
お城や寺社仏閣などの伝統建築に使われた漆喰は、何百年もの間風雨から建物を守ってきました。漆喰が塗られた土蔵などの分厚い壁は中のものを良い状態で守り続けています。
それはその通り。ですが、それは漆喰のおかげだけではないのです。
漆喰には調湿性能があるということも有名ですね。
そうです。漆喰は「水を吸う」素材なのです。
では、伝統建築では?
たとえば法隆寺さんの金堂。
大きく軒が張り出しています。よっぽどの強風で雨が吹き付けられない限り、通常では雨が壁にかかることはありません。
古い屋敷でも同様ですね。茅葺き屋根であってもその軒が大きく出っ張っています。
ではお城は?
さすがにこの高さだと、雨もあたってしまいますね。
でもお城は何百年も…。
そう。何百年も前からありますが、数十年に1度、大改修が行われているのです。姫路城の平成の大改修が始まったばかり。
こまめに傷んだところを直しながら、しっかりメンテナンスを行ってきたからこそ、今の姿があるのです。
では、漆喰が使われた目的は何なのでしょうか?
伝統建築では、土の上から漆喰が塗られていますね。土壁そのままの民家なども各地に残されていますが、やはり構造上雨から守られているものがほとんどです。
では土壁のまま、雨にあたるような構造だと…?
ご覧のとおり。
風雨で土が流されてしまうのです。
漆喰は土壁の保護材料の機能を持っているわけです。
漆喰は水に溶けにくいわけですから、その保護性能は、防水ではなく耐水というべきかもしれません。
近年、外壁に漆喰を使った住宅も流行っています。
が、昔の建築のように軒をたっぷりと出すような贅沢な造りにはできませんね?
45センチ、長くても90センチ程度です。
そこには必ず雨がかかります。なので、漆喰ではなくその内部で防水機能を持っていなければなりません。
デザインや質感だけで漆喰を選ぶのは軽率です。
数十に1度?漆喰を塗り替えるのであればよいのでしょうが、そうはいきませんよね?
ワタシも漆喰が使われることは嬉しいことなのですが、ご相談いただいた時には、「ちゃんと住まいを長持ちさせること」を考えて選ぶことも同時にススメるようにしています。