漆喰というものはとても不思議な素材です。
平らに真っ直ぐ塗ることも出来れば
曲線を描いて丸く塗ることもできます。
時には豪快に
そして時には繊細に
これらの技を日々磨き、卓越したワザを見せてくれる方々。
それが左官職人さんです。
ただ、残念ながら100人の左官さんがいて、全ての方が同じ技術を持っているわけではありません。それは左官に限らず、職人の世界で「匠(たくみ)」と呼ばれる方がいらっしゃるのと同様、日々の修練と努力により「出来る」職人さんが生まれてくるのです。
が、時折「素っ頓狂」な相談をいただくことがあります。
その中でも多いのが「磨き」について。
「今度、漆喰の磨きを入れたいんですが、その材料はどれですか?」
「お施主様の依頼なんですが、お値段、幾らくらいみとけば良いですか?」
「磨きをやれって言われたんですが、マニュアルはありますか?」
罪です。知らないということは罪。
漆喰の「磨き」は左官仕上げの最高技法の一つ。
それは誰にでも出来る技術ではありません。そしてさらに言えば「漆喰」自体、マニュアルがあれば塗れるという代物でもないわけです。漆喰に限らず、釘一本使わぬ大工の技、茅葺きの屋根葺き、漆塗り、どれをとってもマニュアルを見ながらできるものではありません。
それこそが伝統素材。
素材の特性を見極めること、それを扱いこなすこと、それらも「技術」。
だからこそ価値があるものなのです。