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2017/08/23

当たり前に有ったものが当たり前に残っているように

私どもが運営する「一般社団法人伝統素材伝承支援協会」。長いので、皆さん「でんでん協会」と呼んでいます。これまでにも何度か紹介していますが、このブログを最近読み始めた方はでは、いったい何の協会なのか分からないですね。

ですので、改めて紹介します。

でんでん協会の役割はその名の通り、「伝統素材にたずさわる方々の支援を行う」ことです。


活動の理念は4つの言葉。
  • 伝統素材を守ることは伝統技術を守ること。
  • 伝統技術を守ることは古民家を守ること。
  • 古民家を守ることは左官文化を守ること。
  • 左官文化を守ることは伝統素材を守ること。
「伝統素材」…そのへんで簡単に手に入るモノではないんです。

 その原料を生産している方々がいて
 さらにその素材に手をかけ加工している方々がいるのです。

その方々の支援も大切なコトだと考えています。
そのために各地を訪問して現状を学び、それを皆さんへ紹介する活動も行っています。

あるところでは「文化財の工事があるから大丈夫じゃないの?」と言われることがあります。

 残念ながら、それは「間違った考え」です。

建築だけに限らず、
私たちの生活を支える素材は「身近にある当たり前のモノ」だったハズです。

ところがすでに当たり前のモノは無くなってしまっているんです。
例えばワラ。
  • 屋根を葺く材料に。
  • 土壁に練り込んですさに。
  • 畳の床(とこ)に。
そのワラは無農薬のものが手に入りますか?
それとも農薬が残っていても良いのですか?

大規模散布用に使われるラジコンヘリ


そうなんです。様々な素材が失われつつあるんです。
さらに深刻なのはそれを生産する方々、そして加工する方々の人材難。


分かりやすい例を挙げれば林業です。

樹は放っておいて真っ直ぐな柱に出来るものには育ちません。
林業にたずさわる方が枝打ちを行い
山に手を入れることで良い木が育っていましたが…

後継者が不足する現在、荒れる山が増えています。


かつて私たちが暮らす周囲には
里山と呼ばれる人の手が入った山がありました。
それらが荒廃することが、
土砂崩れや水不足を招いている原因の一つでもあります。


理由は簡単なコト。
国産の木を使わないから。山にあるものを利用しないから。

私もまだまだ勉強中の身ではありますが、私が学んだコト、これからももっとお伝えしていきますね。


最後に当協会の活動方針です。 

【設立の言葉】

日本の伝統美は千年以上かけて、残されてきたのではなく長い時間をかけて進化してきたものであると考えます。
残されてきたものこそが本物であり、様々な変化を経て残されたカタチ。
今も残る古民家や、古くから残されてきた寺社仏閣。風雨に晒され自然と同化していくその姿。
私たちの心の奥底にはそれらを「美しい」と感じることができる心のスヰッチが残されているはずです。

長い年月をかけた「伝承」と「革新」の繰り返し。私たちはそれを「伝統」と呼んでいます。
現代に生きる私たちは、常に本物を本物と認識し、素材と技術を伝承し続けていくことを目指さなければなりません。

ところが現在、我が国の伝統文化を支えてきた素材は需要の低下や後継者不足、環境破壊によってそれ自体の確保が難しくなっており、また、幾度となく再利用されてきたはずの古材をはじめとする伝統資財は、スクラップアンドビルドの考えが浸透してしまった建設業界において、価値を持たないゴミとして捨てられていく悲しい状況にあります。

私たちは伝統文化の底辺を支える者として、伝統素材を残すための活動を行うべく本会を設立いたしました。

漆喰を中心とした左官材料についての知識見識を広く集め、広く伝え、たくわえ、左官文化を後生に残す活動を行うだけでなく、塩焼き石灰、?(すさ)、海藻のり、青表などの伝統素材生産者の方々、並びに麻、海藻、和紙、藺草、顔料、油など、失われつつある原料生産者の支援活動を行って参ります。

また、古民家が財(タカラ)であることを広く皆様に認知していただくべく、伝統資財施工士・古民家鑑定士として、古民家鑑定の活動を通じ、古民家の保存、古材・伝統資財の活用・再利用を呼びかけて参ります。それが循環型社会の再実現に寄与し、社会・環境に貢献することとなればと願っております。



当たり前に有ったものが当たり前に残っているように。
それが美しい未来だと思います。