なので、今日はちょっと脱線して土壁のお話も。
ヒトにとって漆喰よりも「身近な」素材。それが土です。
昔の庶民の家は板壁か土壁。漆喰は贅沢品だったんです。
住まいに限らず、もともとヒトの暮らしを支える全ての素材は、身近にあって容易に手に入り、繰り返し使えるものばかりでした。だからこそ、世界中どの国にも土を使う文化が根付いています。
素敵なティータイムも土が無いと…陶器は土から出来ているんですよ!?
さて、文化史についてはその道の専門家の方のサイトなどで学んでいただくとして、今日は壁としての「土」、とりわけ昔から残されてきた技術「版築」をちょっとだけおさらいです。
版築(はんちく)とは板で作った型枠に土を突き固め、何度も繰り返しその作業を行うことで土の層を積み上げていく技術。 由緒ある寺社仏閣の土塀などでその姿を見ることができます。
幾重にも積み重ねられた地層のような模様。
そして表面には型枠に使われた木目がまだキレイに残る部分もあります。
それが徐々に風化していくと…
突き固められた層ごとに削れ始めているのが分かりますね。
どうでしょう?朽ちてもそれが「美しい」と思えませんか?
それこそが伝統素材の魅力であり、もちろん土の魅力でもあります。
苔生した石垣、表層が磨耗した土壁、ひび割れた漆喰…私達には「傷み」を自然のあるがままの姿としてとらえ、さらには美しいと思うDNAが秘められていると思っています。
ちなみに…これらの写真の土壁は、兵庫県西宮市の西宮神社さんの「西宮神社大練塀」。
熱田神宮の信長塀、三十三間堂の太閤塀と並んで称される日本三大土塀の一つです。それぞれに違う素晴らしさがありますから、是非。